芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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マンションの今とその先(その6)−被災マンション法の見直し−

法制審議会(被災関連借地借家・建物区分所有法制部会)では、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にする制度を整備する必要性を踏まえ、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」(被災マンション法)を早急に見直すために審議してきたところ、10月26日に「中間取りまとめ」を取りまとめ、昨日からパブリックコメントに付されました。

この「中間とりまとめ」では、大規模な災害により区分所有建物が重大な被害を受けた場合、多数決により、建物を取り壊す旨の決議をすることができる「取壊し決議制度」や建物取り壊し後に建物の敷地を売却する旨の決議ができる「敷地売却決議制度」などが新設されることになりました。取壊し決議では、区分所有者及び議決権の各5分の4以上、敷地売却決議では、敷地共有者の持分の価格の5分の4以上の多数が必要とされています。

今回の見直しは、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物が対象で、管理が不十分などの理由からスラム化したマンションなどは対象外です。しかし、今後、この新制度が上手く機能する場合には、区分所有法の見直しにつながり、マンションの今とその先(その1)から(その3)で触れた新しいマンションの終わり方の一里塚となる可能性があります。細部の制度設計はこれからのようですが、登記手続との関係で使い勝手が悪くならないような工夫が期待されます。

全国自治体向け条例データベース

平成24年10月29日、自治体向けに立法支援のための条例データベースシステムが無償で公開されました。通称、eLenと呼ばれるシステム(の一部)で国立大学法人名古屋大学大学院法学研究科附属法情報研究センターにて開発されたものです。eLenは、単なる条例のデータベースにとどまらず、自治体の例規データについて横断的な検索や類似例規を容易に探すことができ、(将来的には)「政策設計の初期の試行錯誤や住民の要望収集・整理の段階から、要綱案作成や例規執筆の段階までをWeb上でシームレスに支援することを目指」す、一歩進んだシステムのようです。各地の自治体において、法曹有資格者を職員として登用する動きが広がりつつありますが、人手の足りない自治体にとっては、このeLenは大変強力な助っ人になる可能性を秘めています。

ただeLenの利用対象者が自治体内の例規業務に携わる方とされているため(他に大学等の研究機関や町村会等の関連協力団体も利用しているとのことです)、民間人が使用できない点は実に残念です。

マンション管理組合における理事会の裁量権

多くのマンション管理組合では、理事会が存在し、理事会が中心となってマンション管理が行われております。今回は、この身近な理事会に関する裁判例を紹介します。

管理組合法人の事案ですが、総会で大規模修繕工事の決議がなされたものの、ある事情から、その後、大規模修繕工事の一部を保留する決定を理事会が行い、実際に保留された工事の実施を見合わせたところ、これを不服とする区分所有者Aが理事らに対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償などを請求したというものです。当時の事情としては、規約に反して専有部分(店舗)前の共用部分に室外機や看板を設置していた区分所有者Aが、工事に協力する条件としてその規約違反状態の容認を求めるなどしたために、その店舗前の共用部分のタイル張替工事を断念せざるを得なかったようです。

 この事案において、裁判所は、「本件修繕工事については、総会が実施することを議決したが、理事会は、すべてにおいてその執行(実施)が義務付けられたというものではなく、執行(実施)する権限が授与されたものというべきであり、理事会が本件修繕工事を実施するにあたっては、理事会に一定の裁量が認められているというべきである。」と説示した上で、本件では裁量の逸脱は認められないなどと判断して、区分所有者Aの請求を棄却しました(東京地裁H24.3.28 判例時報2157号50頁)。

実務的には、本件のような場合に限らず、理事会にある程度の裁量があることを前提にマンション管理が行われておりますが(そもそも理事会等に一定の裁量を認める内容の総会決議となっているケースも多いと想像されます)、判例時報の解説によれば、「マンション管理組合の理事会に裁量があることを明示した初めての裁判例」であるとのことです。なお、この判決では、理事会が「管理組合の執行機関である」と明言していますが、この点は議論の余地があるでしょう。

全国都市緑化フェアと緑被率

先週の話ですが、東京地裁から内幸町の駅に向かうために日比谷公園を歩いていると、全国都市緑化フェアが開催されていました。歩道の脇には、ガーデンコンテストの出典作品が展示され、その作品の一つが下の写真の庭です。

緑化フェアに触発されたわけではありませんが、仕事を終え、自宅に戻ると東京23区の緑被率が気になり、早速インターネットで検索すると、調査方法と調査年度が異なるため単純比較はできないものの、概ね西高東低の傾向にあることがわかりました。緑被率の高い区は、20%を超えますが、低い区では10%を下回っています。我が大田区では、(仮称)大田区みどりの条例(素案)に対する大田区区民意見公募手続(パブリックコメント)を実施したばかりで、区民からの「緑被率の目標値は?」という質問に対し、大田区は、「グリーンプランおおた(大田区緑の基本計画)では、基準の2009年の20.47%から2030年に緑被率21.5%を目標としています。区民1人が1平方メートル緑をつくれば、緑被率は1%上昇します。」と回答しています。それにしても、20年で1%UPはないだろう、もっとできるのではないか、なんとかして欲しい、と思うのは私一人ではないはずです。

名古屋市演劇練習館(旧稲葉地配水塔)

Photo No.23

撮影場所:名古屋市演劇練習館(旧稲葉地配水塔)

撮影日 :2012.9.18

撮影者 :Y.T.

5月に東山給水塔を訪ねた際に、「次はここ」と考えていました。実に堂々とした建物です。 ただ、竣工後僅か7年で配水塔としての役割を終え、廃屋同然の状態で放置されるなど(田中良英・岡田昌彰:「名古屋市演劇練習館(旧稲葉地配水塔)の景観・空間特性に関する研究」)、常に陽の当たる道を歩んできたわけではないようです。

風景の思想

表題に惹かれ、「風景の思想」という単行本(学芸出版社)を購入しました。帯紙に「日本人は風景をどのように見てきたのか。これから風景とどのように関わりあっていけばよいのか。哲学から土木まで、多様な専門家が、風景との関わりをいかに主体的に回復していくかを論じた意欲作」とあるように、景観、都市計画、建築学にとどまらず、美術史、生態学の専門家などが風景について論じています。建築・不動産に繋がる話が多く、いずれも興味深いものでしたが、最も印象に残ったのは、宇根豊氏の「農と風景」(副題:風景としての百姓仕事の発見)でした。

借地借家法38条2項書面

定期建物賃貸借を行おうとするときは、「建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」とされていますが(借地借家法38条2項)、これまで、この交付される書面が賃貸借契約書と別個のものでなければならないかについて、見解が分かれていました。

この点について、最高裁第一小法廷は、平成24年9月13日、「法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。」と結論付けました。

この結論を導く過程で、借地借家法38条の規定の構造及び趣旨が示されていますが、その内容については議論の余地があるように思われます。

不動産価格指数(住宅)

本日、国土交通省から「平成 24 年 8 月末より、年間約 30 万件の住宅・マンション等の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別に毎月の不動産価格を指数化した「不動産価格指数(住宅)」の試験運用を開始する。」との発表がありました。この不動産価格指数(住宅)は、国際指針に基づいて作成されていることから、不動産市場の動向を適時に国際比較することが可能になるとのことです。なお、不動産価格の動向に関する指標としては、他に東証住宅価格指数があり、この二つの指数が示す動向を見比べるのも面白いかもしれません。

旧小寺家厩舎

Photo No.22

撮影場所:旧小寺家厩舎

撮影日 :2012.7.30

撮影者 :Y.T.

兵庫県公館を訪れた以上、相楽園に立ち寄らないわけにはいかないと思い、重いバッグを肩に担ぎ、熱風の中、相楽園を見学しました。園内に保存されている旧小寺家厩舎は、明治40年頃に建築された建物で、重要文化財に指定されている大物です。

旧小寺家厩舎の脇には、これもまた重要文化財である旧ハッサム住宅がありますが、円(丸)型の塔屋ある旧小寺家厩舎が好みのタイプです。旧ハッサム住宅の写真はこちらです。

兵庫県公館(旧兵庫県庁舎)

Photo No.21

撮影場所:兵庫県公館(旧兵庫県庁舎)

撮影日 :2012.7.30

撮影者 :Y.T.

庭の木々が公館を隠すように茂っているため、建物が頭を突き出してこちらを覗き見ているかのような構図となりました。猛暑のためか、来館者の姿はなく、館内をゆっくりと見学することができました。

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