芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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原題「Just Culture」(原著者:Sidney Dekker)、邦題「ヒューマンエラーは裁けるか」(東京大学出版会)をようやく読み通しました。本に挟まれたレシートの日付は「2010/01/02」ですので、購入してから3年ほど積ん読状態にあったわけです。

著者は、ヒューマンエラーが犯罪とみなされる傾向に警鐘を鳴らし、事故に対する司法の介入の問題点を指摘します。法曹関係者にとっては耳の痛い話が多いのですが、考えさせられる内容で、買って損のない本と言えます。特に印象に残ったのは、私達が客観的で中立的なものの見方(の提供)を司法システムに期待していることに対する著者の次の指摘です。即ち、「たとえ目隠しをした正義の女神のように、客観的で、公平無私で、先入観なく中立の立場で考えることができると思っていても、客観的な視点から話をすることは不可能である。」とし、続けて「世界を客観的に見ているというのなら、いったいどこから見ていると言うのか? 客観的な視点とは『存在しない場所からの視点』なのである。そして、そんなものはない。」と。

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