芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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マンション再生と総合設計制度

マンションの老朽化にどのように対応するかは頭の痛い問題です。決め手となる対応策はなかなか見当たりませんが、数少ない現実的な解決手法として総合設計制度を利用したマンションの建て替えがあります。総合設計制度とは、「敷地内に歩行者が日常自由に通行又は利用できる空地(公開空地)を設けるなどにより、市街地の環境改善に資すると認められる場合に、特定行政庁の許可により、容積率制限や斜線制限、絶対高さ制限を緩和」する制度です(国土交通省のWebサイトから一部引用)。この制度を利用して、通常以上の分譲戸数を確保し、そこから建て替え原資を捻出しようとするわけです。昨年末にはテレビ東京の人気番組であるワールドビジネスサテライトにおいてもその実例が取り上げられました。

もっとも、この総合設計制度を利用する方法では、概して(超)高層マンションへの建て替えとなるため、マンションの高層化を快く思わない近隣住民との間で紛争となる可能性があります。実際に裁判にまで発展したケースとしては、原宿団地の建て替えがよく知られています。この事案では、総合設計許可の取り消しを求めるという形で訴訟が提起され、この許可に当たっての東京都知事による公開空地の有効係数の評価などが問題となりました。裁判の中では、(旧)東京都総合設計許可要綱をめぐる主張の遣り取りがなされ、私自身もこの要綱を自宅と事務所の行き来の間に読むなどしましたが、なかなか興味深い事件です。第一審判決の内容は、判例時報2156号30頁に掲載されていますので、関心のある方はご参照下さい。

なお、総合設計制度を利用して建て替えられた(より大規模化した)マンションが時を経て老朽化が進んだ場合には、(現行の法制度のままでは)冒頭で述べたとおり頭の痛い問題として改めて悩むことになりそうです。

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