賦課金と瑕疵担保責任
少し前の話ですが、土地区画整理事業の施行地区内の土地を売買により取得された方が、売買後に土地区画整理組合から賦課金を課されたため損害を被ったと主張し、売主に対し、瑕疵担保責任に基づく賦課金相当額の損害賠償等を求めた事案において、その瑕疵の有無等に言及した最高裁判決が登場しました。
最高裁第二小法廷は、平成25年3月22日、「瑕疵あり」とした広島高裁判決を破棄し、「買主が売買後に土地区画整理組合から賦課金を課される一般的・抽象的可能性は,常に存在しているものである」として、これをもって「本件各土地が本件各売買において予定されていた品質・性能を欠いていたということはできず,本件各土地に民法570条にいう瑕疵があるということはできない」と判示しました。
この当時、類似の別事件に関与し、上記広島高裁判決の考え方や事実認定は是認できないとの主張を展開してきた中で、ほぼ同趣旨のこの最高裁判決が登場したことは素直に嬉しかったことを覚えています。
もっとも、今度は買主側の相談も受けてみたいとも考えています。
春宵十話
角川ソフィア文庫から日本が誇る天才的数学者岡潔氏の「春宵十話」と「春風夏雨」が復刊されました。「人の中心は情緒である」ことを基本に据えて、いずれも著者の考えが自由な形式で述べられています。本の題名でもある「春宵十話」は、50年以上前に毎日新聞社で連載され、多くの人に影響を与えたようです。述べられていることが正しいかどうかはともかく、確かに人を惹きつけます。著者は、学生に対し、集団として考え、また行動するようしつけることに批判的で、「数人寄ってディスカッションをしないと物を考えられなくなる。しかしそれでは少なくとも深いことは何一つわからないのだ。」と述べていますが、「一人で」かつ「深く」考えた人の言葉だからこそ人を惹きつけ、影響を与えることができるのでしょう。話が面白い人の特徴の一つです。
旧日比谷公園事務所
撤饌
今更ながら
耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却ガイドライン
平成26年12月24日、国土交通省から「耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却ガイドライン」が取りまとめられました。同省は、既に「マンション建替え実務マニュアル」等を公表しているところ、上記ガイドラインはそのシリーズの一つと位置付けられます。法的な拘束力を持つものではありませんが、マンションの建替え等を検討される方が手始めに参照する内容となっています。
手土産
歴史主義の貧困
年末の休みを利用して、「歴史主義の貧困」(日経BPクラッシックス 著者:カール・ホパー)を読み直しました。カール・ホパーは、全体主義を批判した哲学者ですが、本書では、「本書成立の経緯」という箇所で端的に述べられているように、「本書の基本的主張は、〈歴史的な運命への信仰はまったくの迷信であり、人間の歴史の行く末を科学的方法または何らかの合理的方法により予測することはできない〉というものである。」という点について論じています。英語版の出版は1957年ですが、60年以上経てもなお興味深く読むことができる内容です。
この後、積ん読状態の「技術への問い」(平凡社 著者:マルティン・ハイデッガー)に挑戦しましたが、ページをめくる手が重くなってなかなか先に進まず、敢え無く途中棄権となりました。