芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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TOPICS

新年のご挨拶

新春を迎え、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。本年が、皆様にとって、輝かしい一年となることを祈念しております。

年始年末休業のお知らせ

平成25年12月28日(土)から平成26年1月5日(日)までの期間、年始年末休業とさせていただきます。ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。

世田谷区民会館

Photo No.27

撮影場所:世田谷区民会館

撮影日 :2013.10.4

撮影者 :Y.T.

東京法務局世田谷出張所内での書類の受渡しが終わったため、法務局の近くにある世田谷区役所に立ち寄りました。世田谷区では、第一庁舎、第二庁舎及び世田谷区民会館の全部又は一部の取り壊しを検討しているようですが、いずれも著名な建築家である前川國男氏が設計した建物です。写真の世田谷区民会館は、昭和34年3月に竣工し、日本建築学会関東支部などから保存に向けた意見が表明されています。

マンションの今とその先(その7)

久しぶりのtopicsの更新です。春先から時間に追われ、このままでは店ざらし状態で年末に突入しそうなので、気持ちを切り替えて、更新することにしました。

お伝えしたいことがなかったわけではなく、例えば、8月29日の新聞報道にもあるように、国土交通省と法務省との間で老朽化したマンションの売却を促す法整備の協議が開始され、マンション1棟丸ごとの売却や解体を容易にするための具体的な取り組みが始まるなどの大きな動きがありました。ようやく「マンションの今とその先」で述べてきた方向へと動き始めたわけです。

なお、法務省は、老朽化したマンションに関する法制度上の問題点等を検討するため、諸外国における法制度の運用状況、裁判例等について調査していたとろ、今春、その調査結果を公表しました。同省のWebサイト上に「老朽化した区分所有建物の建替え等に関する諸外国の区分所有法制及びその運用状況等に関する調査研究報告書」が掲示されていますので、ご参照下さい。

この調査報告書では、「区分所有建物の持続的な維持」を基本的な考え方と位置付け、「老朽区分所有建物に対する措置として、アメリカ法やイギリス法が有する解消制度や、フランス法の荒廃区分所有建物制度のわが国への導入について」は「直ちにこれらを喫緊の問題として検討する必要はないものと思われる。」としており、法改正には慎重な言い回しも見受けられます。他方、「昭和 58 年の区分所有法の改正の際に《将来のことを考えて》 建替え制度を創設したように、解消制度および行政法と連携した荒廃区分所有建物制度についての検討をも視野に入れておくことは必要であると思われる。」とも述べておりますので、法務省の姿勢次第では、今後の法改正に向けた動きが加速することも減速することも両方ありうると考えています。

田園調布駅(復元)駅舎

Photo No.26

撮影場所:田園調布駅(復元)駅舎

撮影日 :2013.4.5

撮影者 :Y.T.

田園調布での仕事が終わり、駅まで送っていただいた際の写真です。現在の建物は、平成12年に復元されたもので、駅舎としての機能はありません。秋も素敵ですが、春の暖かい陽射しも似合う駅舎でした。

ヘルスケアリート

国土交通省が設置しました「ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化手法の活用及び安定利用の確保に関する検討委員会は、3月27日、これまでの検討結果を取りまとめ、公表しました。本格的なヘルスケアリートの創設・普及のためには、解決すべき課題がありますが、そう遠くない時期にヘルスケア施設を専門に投資する大規模なヘルスケアリートが複数登場するでしょう。またヘルスケアリートの普及に伴い、オペレーターを評価する仕事などが創出されるかもしれません。

個人的にはヘルスケアリートの登場によって、CCRCが身近になることを期待しています。CCRC (Continuing Care Retirement Community)とは、「高齢者向け住居・施設の一種。健常者用、軽介護者用、重介護者用、認知症患者用の各施設を同じ敷地又は同じ建物に集約し、居住者が移転や更なるコスト負担がなく、安心して暮らし続けることができる高齢者コミュニティ」です(上記「取りまとめ」の定義です)。自立して生活できる段階から介護が必要な段階に至るまで、同じ場所、同じコミュニティで生活できることは魅力的です。また、都市が縮小する中で、CCRCは、「賢く小さくなる」ための手がかりとなる可能性があります。

給水塔(多摩モノレール・高松駅)

Photo No.25

撮影場所:給水塔(多摩モノレール・高松駅)

撮影日 :2013.3.19

撮影者 :Y.T.

平成21年4月20日に東京地方・家庭裁判所立川支部が開庁されましたが、これまで不思議と縁がなく、今月初めて立川支部に出向きました。最寄りの駅である多摩モノレール・高松駅の北東方向に見えるのが、今回の給水塔です。可愛らしいサイズの給水塔です。

ジャスト・カルチャー

原題「Just Culture」(原著者:Sidney Dekker)、邦題「ヒューマンエラーは裁けるか」(東京大学出版会)をようやく読み通しました。本に挟まれたレシートの日付は「2010/01/02」ですので、購入してから3年ほど積ん読状態にあったわけです。

著者は、ヒューマンエラーが犯罪とみなされる傾向に警鐘を鳴らし、事故に対する司法の介入の問題点を指摘します。法曹関係者にとっては耳の痛い話が多いのですが、考えさせられる内容で、買って損のない本と言えます。特に印象に残ったのは、私達が客観的で中立的なものの見方(の提供)を司法システムに期待していることに対する著者の次の指摘です。即ち、「たとえ目隠しをした正義の女神のように、客観的で、公平無私で、先入観なく中立の立場で考えることができると思っていても、客観的な視点から話をすることは不可能である。」とし、続けて「世界を客観的に見ているというのなら、いったいどこから見ていると言うのか? 客観的な視点とは『存在しない場所からの視点』なのである。そして、そんなものはない。」と。

都市計画(情報)図の誤記

前回のTopicsでは、総合設計制度に関連して、公開空地の有効係数をめぐる裁判例を紹介しましたが、今回も、墨田区が作成頒布した都市計画を示す図面に誤記があったという行政がらみの事件についてお話をします。

お役所が作成頒布した図面に誤りがあるとは少々驚きですが、実際にあった話です。誤記の具体的な内容は、本来「第三種高度地区」と表記すべきところを「二二m高度地区」と誤って表記したというものです。 ちなみに、「都市計画は、国土交通省令で定めるところにより、総括図、計画図及び計画書によつて表示するものとする。」とされていますが(都市計画法14条1項)、この事案では、この計画図(本図)に誤りがあったわけではなく、計画図(本図)に基づいて、広く一般市民等に対し情報提供するために作成された図面に誤記があったということのようです 。そしてこの誤記が原因で、(当然のことですが) 誤った情報に基づきマンションを建設しようとした不動産業者との間で紛争が生じ、裁判沙汰となりました(東京地裁H24.2.8 判例時報2165号87頁)。裁判の主な争点は、不動産業者が主張する損害がどこまで認められるのか、という点にあったようですが、そのような法的な話よりも、ヒューマンエラーはどこにでも起こりうるということが強く印象に残る事件です。

マンション再生と総合設計制度

マンションの老朽化にどのように対応するかは頭の痛い問題です。決め手となる対応策はなかなか見当たりませんが、数少ない現実的な解決手法として総合設計制度を利用したマンションの建て替えがあります。総合設計制度とは、「敷地内に歩行者が日常自由に通行又は利用できる空地(公開空地)を設けるなどにより、市街地の環境改善に資すると認められる場合に、特定行政庁の許可により、容積率制限や斜線制限、絶対高さ制限を緩和」する制度です(国土交通省のWebサイトから一部引用)。この制度を利用して、通常以上の分譲戸数を確保し、そこから建て替え原資を捻出しようとするわけです。昨年末にはテレビ東京の人気番組であるワールドビジネスサテライトにおいてもその実例が取り上げられました。

もっとも、この総合設計制度を利用する方法では、概して(超)高層マンションへの建て替えとなるため、マンションの高層化を快く思わない近隣住民との間で紛争となる可能性があります。実際に裁判にまで発展したケースとしては、原宿団地の建て替えがよく知られています。この事案では、総合設計許可の取り消しを求めるという形で訴訟が提起され、この許可に当たっての東京都知事による公開空地の有効係数の評価などが問題となりました。裁判の中では、(旧)東京都総合設計許可要綱をめぐる主張の遣り取りがなされ、私自身もこの要綱を自宅と事務所の行き来の間に読むなどしましたが、なかなか興味深い事件です。第一審判決の内容は、判例時報2156号30頁に掲載されていますので、関心のある方はご参照下さい。

なお、総合設計制度を利用して建て替えられた(より大規模化した)マンションが時を経て老朽化が進んだ場合には、(現行の法制度のままでは)冒頭で述べたとおり頭の痛い問題として改めて悩むことになりそうです。

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