芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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CATEGORY :仕事の話

不動産取引と暴力団排除条項

不動産流通4団体が暴力団等の反社会的勢力を排除するための契約条項(案)をとりまとめたことは、既にご案内しましたが、平成23年9月8日、社団法人不動産協会においても、不動産売買契約・不動産賃貸借契約に関して暴力団等反社会的勢力を排除するためのモデル条項を決定致しました。詳細は社団法人不動産協会のWebサイトをご参照下さい。

宅地建物取引業法施行規則の改正

宅地建物取引業者等が契約の締結の勧誘を行うに際して「してはならない」行為(禁止行為)が定められておりますが、宅地建物取引に係る悪質な勧誘行為の実態調査を踏まえ、宅地建物取引業法施行規則を一部改正し(平成23年10月1日から施行)、次の行為が禁止行為として明文化されることになりました。

・勧誘に先だって宅地建物取引業者の商号又は名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行うこと

・相手方等が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続すること

・(勧誘を行うに際して)迷惑を覚えさせるような時間に電話し又は訪問すること

発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン

本日(平成23年8月29日)、国土交通省から「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」が公表されました。建設業法に照らし、施主と(施主から直接工事を請け負った)請負人のとるべき対応や不適切な対応等が明示されております。なお個人が発注する工事で専ら自ら利用する住宅や施設を目的物とするものに関する取引については、このガイドラインの対象とされておりません。

義援金等の差押禁止

既に報道されておりますように、東日本大震災の被災者の方々の生活再建のために、昨日(8月23日)、災害弔慰金及び災害障害見舞金、被災者生活再建支援金並びに義援金について、差押等を禁止する法案(災害弔慰金の支給等に関する法律及び被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案・東日本大震災関連義援金に係る差押禁止等に関する法律案)が成立しました。支給・交付を受ける権利だけではなく、支給・交付された金銭についても差押が禁止される内容です。

なお参議院の災害対策特別委員会が指摘するように、「強制執行に当たり差押えが禁止された金銭であることを特定・識別することが可能となるよう、災害弔慰金及び災害障害見舞金、被災者生活再建支援金並びに東日本大震災関連義援金について都道府県及び市町村等が発行する証明書類等の実情を調査した上で裁判所と情報の共有を図るなど、本法の適切な運用がなされるよう努めること」(同委員会の議事録参照)が大事になるでしょう。

個人債務者の私的整理に関するガイドライン

東日本大震災の被災者の方々の所謂二重債務問題は、再スタートを切る上で足枷となることから、この問題に対する適切な対応が求められていたところ、その対策の一つである「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の適用が平成23年8月22日から開始されました。このガイドラインによる債務整理を的確かつ円滑に実施するために、第三者機関として「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」(一般社団法人です)が設立され、Webサイトが公開されました。Webサイトでは、リーフレット(パンフレット)、書式一覧、手続の説明等が掲載されており、二重債務問題でお困りの被災者の方々にとって有益な情報が提供されております。

マンション標準管理規約の改正

平成23年7月27日、国土交通省からマンション標準管理規約の改正について発表がありました。今回の改正では、⑴執行機関(理事会)の適切な体制等の確保(役員の資格要件の緩和等)、⑵総会における議決権の取扱いの適正化(議決権行使書・委任状の取扱いの整理等)、⑶管理組合の財産の適切な管理等(長期修繕計画書等の書類等の保管等に関する整理等)及び⑷標準管理規約の位置づけの整理、という4項目に関して、規約及びコメントの変更がなされています。詳しくは国土交通省のWebサイトをご参照下さい。

建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵

建物の建築に携わる設計・施工者等の注意義務違反が原因で、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵が存在する場合には、(特段の事情がない限り)その設計・施工者等は不法行為による賠償責任を負うことになると説示した著名な最高裁判決がありますが(平成19年7月6日最高裁第二小法廷判決)、平成23年7月21日、その続編というべき判決が最高裁第一小法廷から言い渡されました。この判決では、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」について、「居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。」と述べるとともに、「建物の美観や居住者の居住環境の快適さを損なうにとどまる瑕疵は,これに該当しないものというべきである。」と整理しています。

貸主vs.借主

平成23年7月15日に更新料の有効性に関する最高裁判決が下されました。今年は、敷引特約の有効性に関する最高裁判決も下されており(特に同月12日の最高裁第三小法廷の判決は、賃貸借契約に関する様々な見方が示された興味深い判決です)、貸主側と借主側ががっぷり四つに組んだ戦いが繰り広げられた勝負の年でした。スポーツの世界では、王者が交代する前後の時期の試合では、名勝負となることが多く(双方の力が拮抗しているためでしょうか)、今回の貸主vs.借主という対決にもそのような側面があると感じています。裁判の結果はとりあえず貸主側に軍配が上がったと評価できそうですが、賃貸借(契約)における力関係の転換期(貸主側優位から借主側優位へという転換)にあるという見方です。借主側から提起された問題点については、人口の減少という外部環境に変化がない限り、賃貸市場の競争原理の中で改善されることになるのではないでしょうか。貸主側の戦いはこれからが本番かもしれません。

液状化

東北地方太平洋沖地震により引き起こされた東日本大震災において、改めて液状化の恐ろしさを実感致しました(なお、このサイトでは液状化の責任論を述べるつもりはありません)。7月6日付けの日本経済新聞によれば、「国土交通省は住宅地の液状化を防ぐための地盤強化策について、個人負担を軽減する新制度を設ける。」とのことで、新たな液状化対策の動きもあるようです。また国土交通省は、7月6日から、震災復旧・復興に資する約1,700件の技術を公表しておりますが、その中で液状化対策に関する多数の技術がUPされておりますので、興味のある方は同省のWebサイトをご参照下さい。

不動産取引と暴力団排除条項

不動産流通4団体は、平成23年5月末までに暴力団等の反社会的勢力を排除するための契約条項(案)をとりまとめ、6月以降、講習会等を通じて会員を啓蒙し、この条項案の普及を図ることになりました。不動産流通4団体とは、社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、社団法人全日本不動産協会、社団法人不動産流通経営協会及び社団法人日本住宅建設産業協会のことです。今後は、不動産取引の契約書に「暴力団等反社会的勢力排除条項」が記載されるケースが一層増えることになります。

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