芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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CATEGORY :仕事の話

マンションの今とその先(その2)

現在のマンションは、新築、分譲、適切な管理、建て替え、そして再び適切な管理・・・というサイクルを辿ることが予定され、このサイクルを守るために、管理体制の改善・強化、建て替えの促進策等が講じられてきました。しかし、昨日のTOPICSで触れたように、(事実上)建て替えという出口しかない制度はいささか窮屈です。建て替えに加え、例えば、(特別)多数決により区分所有関係を解消し、換価・分配するという別の出口が与えられても良いように思えます。現行法でも区分所有関係の解消は可能ですが、全員の同意が必要な点がボトル・ネックとなっています。

マンションの今とその先(その1)

2月10日付の読売新聞(朝刊)は、行政刷新会議の「規制・制度改革に関する分科会」が、規制改革検討案に「老朽化した団地の一括建て替えに必要な区分所有法の要件見直しなどを盛り込んだ。」と報じました。老朽化が進んだマンションが放置される場合、そこに住む方の安全・安心の問題だけではなく、その周辺に与える影響も懸念されるため、行政刷新会議が打ち出した方向性は概ね理解できます。ただ、今後のマンションの在り方まで考えた場合、建て替えの促進だけではなく、マンションの終わり方として(事実上)建て替えしかないという窮屈な制度を本格的に見直す時期に来ているのではないでしょうか。

マンションに関連する新たな取り組み

現在、国土交通省は、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」と「持続可能社会における既存共同住宅ストックの再生に向けた勉強会」を設置し、共同住宅についてソフト及びハードの両面から検討を行っています。両検討会の議事録は後日公開されますので、今後、議事の内容や議論の方向性について(差し障りのない範囲で)随時コメントする予定です。

区分所有者の共同の利益に反する行為

問題行動を繰り返す区分所有者の存在は、マンションの管理組合にとって頭痛の種ですが、管理組合側としては、まずは、その問題行動が「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法6条1項)に該当するか否かを判断し、その後の対応を考えることになります。もっとも、該当するか否かの判断が容易でない事例も少なくありませんが、先日、この「区分所有者の共同の利益に反する行為」に関連する最高裁の判決がありました(最高裁第三小法廷平成24年1月17日判決)。

最高裁は、「マンションの区分所有者が,業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し,マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は,それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので,それにより管理組合の業務の遂行運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には,法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地があるというべきである。」と説示しました。

この事件は、東京高等裁判所に差し戻され、改めて審理されることになりましたが、マンションの管理を行う上で参考になる判例と考え紹介する次第です。

前入居者の使用方法と心理的瑕疵

昨年、中古マンション売買の紛争事例で、マンションが前入居者(賃借人)によって「相当長期間にわたり性風俗特殊営業に使用されていたことは、民法五七〇条にいう瑕疵に当たるというべきである。」とし、売主(区分所有者)の瑕疵担保責任と不動産仲介業者の説明義務違反を認める内容の判決がありました(平成23年3月8日福岡高裁判決 判例時報2126号70頁)。

ちなみに、この前入居者の使用方法については、マンション管理組合と前入居者・区分所有者間での別の訴訟(第一審)において、前入居者が「実質的には性風俗特殊営業を営んでいたこと」が認定されております。判決内容の当否については立ち入りませんが、実務の上では、関係者の(噂)話ではなく、先行判決の事実認定という裏付けが存在した点が重要です。

連棟式住戸の収去について

長年、マンションに関する相談に携わっていますと、関係者が悩み、判断に迷う問題の傾向が見えてきます。例えば、共用部分の範囲(実務上判断が難しいケースは珍しくありません)や借地権付マンションにおける地代未払者への対応などは、繰り返し相談がある事項です。いずれも容易に答えを出せない事実上又は法律上の問題を抱えていますが、平成24年1月1日号の判例時報で、この2つの点に「関連した」裁判例が紹介されました(大阪高判H23.3.30 判例時報2130号13頁)。強制執行手続により、連棟式一棟建物における特定の住戸部分を収去し、土地明渡を実現しようとしたところ、その当否が争われた事案です。原審の大阪地裁(大阪地判H22.11.4 判例時報2104号95頁)を含め、理由付けにおいて、裁判所の苦労がしのばれる判決内容となっております。

マンションにおける高圧電力の活用

本日の日本経済新聞(朝刊)に、「東京都内で不動産各社が相次いで、電気代の安さを売り物にしたマンションの開発に乗り出している。」と報じ、その仕組みとして「家庭向けの低圧電力に比べ約2割安い高圧電力を変圧し、各世帯に供給」などと解説しております。この種のビジネスに関わったことがありますが、当時、普段の生活の中で当然と思うところに改善可能性を感じ取り、ビジネスチャンスを見出そうとする関係者の姿勢が印象的でした。なお、法律は、分かり易く整理され、読み手に優しくあって欲しいものですが、残念ながら電気事業法はこの点において改善の要ありです。

区分所有権の競売請求とその後

平成23年10月11日、区分所有権の競売請求に関連して、最高裁第三小法廷から興味深い決定が下されました。区分所有法59条1項による競売請求訴訟の被告であった区分所有者が口頭弁論終結後(判決確定前)に区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合、その後、管理組合側がその事件の(勝訴)判決に基づいて譲受人に対して競売を申し立てることができるかが問題となった事件です(実際の事案では共有持分権が譲渡されておりますが、ここでは話を単純化しました)。

最高裁は、この問題に対して、「建物の区分所有等に関する法律59条1項の競売の請求は,特定の区分所有者が,区分所有者の共同の利益に反する行為をし,又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものであるから,同項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないと解すべきである。」と説示しました。

時間と費用をかけてようやく競売申立まで辿り着いた管理組合側にとっては残念な結論ですが、今後のマンション管理を考える上で参考になる事例であるため紹介する次第です。

なお、この決定には補足意見が付され、事件と直接関係のない次の点について言及がありました。

・新所有者の訴訟引受けの可否について

・被告であった区分所有者に対する競売請求訴訟の認容判確定後競売手続が開始されるまでの救済手続について

いずれも、これまで文献等では詳しく論じられておりませんので、今後、この最高裁の判断を契機に様々な考え方が示されるかもしれません。

内部通報制度の規程集

消費者庁では、事業者における内部通報制度の導入を促し、また既に導入済みの事業者との関係ではより充実した制度の運用に役立つと考えられることから、平成23年9月7日、実際に使用されている事業者の社内規程を「民間事業者における内部通報制度に係る規程集」として取りまとめ、公表しました。建設業をはじめ様々な業種の社内規程が公表されておりますので、同業者は参考になるでしょう。

不動産取引と暴力団排除条項

不動産流通4団体が暴力団等の反社会的勢力を排除するための契約条項(案)をとりまとめたことは、既にご案内しましたが、平成23年9月8日、社団法人不動産協会においても、不動産売買契約・不動産賃貸借契約に関して暴力団等反社会的勢力を排除するためのモデル条項を決定致しました。詳細は社団法人不動産協会のWebサイトをご参照下さい。

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