芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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区分所有権の競売請求とその後

平成23年10月11日、区分所有権の競売請求に関連して、最高裁第三小法廷から興味深い決定が下されました。区分所有法59条1項による競売請求訴訟の被告であった区分所有者が口頭弁論終結後(判決確定前)に区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合、その後、管理組合側がその事件の(勝訴)判決に基づいて譲受人に対して競売を申し立てることができるかが問題となった事件です(実際の事案では共有持分権が譲渡されておりますが、ここでは話を単純化しました)。

最高裁は、この問題に対して、「建物の区分所有等に関する法律59条1項の競売の請求は,特定の区分所有者が,区分所有者の共同の利益に反する行為をし,又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものであるから,同項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないと解すべきである。」と説示しました。

時間と費用をかけてようやく競売申立まで辿り着いた管理組合側にとっては残念な結論ですが、今後のマンション管理を考える上で参考になる事例であるため紹介する次第です。

なお、この決定には補足意見が付され、事件と直接関係のない次の点について言及がありました。

・新所有者の訴訟引受けの可否について

・被告であった区分所有者に対する競売請求訴訟の認容判確定後競売手続が開始されるまでの救済手続について

いずれも、これまで文献等では詳しく論じられておりませんので、今後、この最高裁の判断を契機に様々な考え方が示されるかもしれません。

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