芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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CATEGORY :仕事の話

耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却ガイドライン

平成26年12月24日、国土交通省から「耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却ガイドライン」が取りまとめられました。同省は、既に「マンション建替え実務マニュアル」等を公表しているところ、上記ガイドラインはそのシリーズの一つと位置付けられます。法的な拘束力を持つものではありませんが、マンションの建替え等を検討される方が手始めに参照する内容となっています。

マンションの今とその先(その7)

久しぶりのtopicsの更新です。春先から時間に追われ、このままでは店ざらし状態で年末に突入しそうなので、気持ちを切り替えて、更新することにしました。

お伝えしたいことがなかったわけではなく、例えば、8月29日の新聞報道にもあるように、国土交通省と法務省との間で老朽化したマンションの売却を促す法整備の協議が開始され、マンション1棟丸ごとの売却や解体を容易にするための具体的な取り組みが始まるなどの大きな動きがありました。ようやく「マンションの今とその先」で述べてきた方向へと動き始めたわけです。

なお、法務省は、老朽化したマンションに関する法制度上の問題点等を検討するため、諸外国における法制度の運用状況、裁判例等について調査していたとろ、今春、その調査結果を公表しました。同省のWebサイト上に「老朽化した区分所有建物の建替え等に関する諸外国の区分所有法制及びその運用状況等に関する調査研究報告書」が掲示されていますので、ご参照下さい。

この調査報告書では、「区分所有建物の持続的な維持」を基本的な考え方と位置付け、「老朽区分所有建物に対する措置として、アメリカ法やイギリス法が有する解消制度や、フランス法の荒廃区分所有建物制度のわが国への導入について」は「直ちにこれらを喫緊の問題として検討する必要はないものと思われる。」としており、法改正には慎重な言い回しも見受けられます。他方、「昭和 58 年の区分所有法の改正の際に《将来のことを考えて》 建替え制度を創設したように、解消制度および行政法と連携した荒廃区分所有建物制度についての検討をも視野に入れておくことは必要であると思われる。」とも述べておりますので、法務省の姿勢次第では、今後の法改正に向けた動きが加速することも減速することも両方ありうると考えています。

ヘルスケアリート

国土交通省が設置しました「ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化手法の活用及び安定利用の確保に関する検討委員会は、3月27日、これまでの検討結果を取りまとめ、公表しました。本格的なヘルスケアリートの創設・普及のためには、解決すべき課題がありますが、そう遠くない時期にヘルスケア施設を専門に投資する大規模なヘルスケアリートが複数登場するでしょう。またヘルスケアリートの普及に伴い、オペレーターを評価する仕事などが創出されるかもしれません。

個人的にはヘルスケアリートの登場によって、CCRCが身近になることを期待しています。CCRC (Continuing Care Retirement Community)とは、「高齢者向け住居・施設の一種。健常者用、軽介護者用、重介護者用、認知症患者用の各施設を同じ敷地又は同じ建物に集約し、居住者が移転や更なるコスト負担がなく、安心して暮らし続けることができる高齢者コミュニティ」です(上記「取りまとめ」の定義です)。自立して生活できる段階から介護が必要な段階に至るまで、同じ場所、同じコミュニティで生活できることは魅力的です。また、都市が縮小する中で、CCRCは、「賢く小さくなる」ための手がかりとなる可能性があります。

都市計画(情報)図の誤記

前回のTopicsでは、総合設計制度に関連して、公開空地の有効係数をめぐる裁判例を紹介しましたが、今回も、墨田区が作成頒布した都市計画を示す図面に誤記があったという行政がらみの事件についてお話をします。

お役所が作成頒布した図面に誤りがあるとは少々驚きですが、実際にあった話です。誤記の具体的な内容は、本来「第三種高度地区」と表記すべきところを「二二m高度地区」と誤って表記したというものです。 ちなみに、「都市計画は、国土交通省令で定めるところにより、総括図、計画図及び計画書によつて表示するものとする。」とされていますが(都市計画法14条1項)、この事案では、この計画図(本図)に誤りがあったわけではなく、計画図(本図)に基づいて、広く一般市民等に対し情報提供するために作成された図面に誤記があったということのようです 。そしてこの誤記が原因で、(当然のことですが) 誤った情報に基づきマンションを建設しようとした不動産業者との間で紛争が生じ、裁判沙汰となりました(東京地裁H24.2.8 判例時報2165号87頁)。裁判の主な争点は、不動産業者が主張する損害がどこまで認められるのか、という点にあったようですが、そのような法的な話よりも、ヒューマンエラーはどこにでも起こりうるということが強く印象に残る事件です。

マンション再生と総合設計制度

マンションの老朽化にどのように対応するかは頭の痛い問題です。決め手となる対応策はなかなか見当たりませんが、数少ない現実的な解決手法として総合設計制度を利用したマンションの建て替えがあります。総合設計制度とは、「敷地内に歩行者が日常自由に通行又は利用できる空地(公開空地)を設けるなどにより、市街地の環境改善に資すると認められる場合に、特定行政庁の許可により、容積率制限や斜線制限、絶対高さ制限を緩和」する制度です(国土交通省のWebサイトから一部引用)。この制度を利用して、通常以上の分譲戸数を確保し、そこから建て替え原資を捻出しようとするわけです。昨年末にはテレビ東京の人気番組であるワールドビジネスサテライトにおいてもその実例が取り上げられました。

もっとも、この総合設計制度を利用する方法では、概して(超)高層マンションへの建て替えとなるため、マンションの高層化を快く思わない近隣住民との間で紛争となる可能性があります。実際に裁判にまで発展したケースとしては、原宿団地の建て替えがよく知られています。この事案では、総合設計許可の取り消しを求めるという形で訴訟が提起され、この許可に当たっての東京都知事による公開空地の有効係数の評価などが問題となりました。裁判の中では、(旧)東京都総合設計許可要綱をめぐる主張の遣り取りがなされ、私自身もこの要綱を自宅と事務所の行き来の間に読むなどしましたが、なかなか興味深い事件です。第一審判決の内容は、判例時報2156号30頁に掲載されていますので、関心のある方はご参照下さい。

なお、総合設計制度を利用して建て替えられた(より大規模化した)マンションが時を経て老朽化が進んだ場合には、(現行の法制度のままでは)冒頭で述べたとおり頭の痛い問題として改めて悩むことになりそうです。

投資法人法制の見直しの動きについて

投資信託・投資法人法制の見直しについては、金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」によって検討及び審議が行われてきたところ、この度、「最終報告」(12月7日付)が取り纏められ、公表されました。

この「最終報告」では、投資法人法制の改善点が複数指摘されていますが、その中に「海外不動産取得促進のための過半議決権保有制限の見直し」があります。少し長くなりますが、「最終報告」の該当部分を紹介(引用)しますと、「最終報告」は、「現在、投資法人が、海外不動産を取得すること自体は禁止されていない。他方、事業 支配を制限する趣旨から、投資対象会社の株式の議決権の過半保有が投信法上禁止されている。そのため、外資による不動産投資につき規制がある国において事実上不動産の 取得が困難となっている例がある。こういった場合、投資法人制度の信頼性が確保されることを前提に、投資法人の性質及び事業支配を制限する趣旨などを踏まえつつ、実質 的に投資法人が海外不動産を取得することと同視できるような場合について、当該海外 不動産を取得するためのビークル(SPC)の株式に係る過半以上の議決権保有を認め ていくことが適当である。」と述べています。

海外不動産取得は投資家サイドも期待していると思われますので、この見直しは早急に実現して欲しいものです。

マンションの今とその先(その6)−被災マンション法の見直し−

法制審議会(被災関連借地借家・建物区分所有法制部会)では、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にする制度を整備する必要性を踏まえ、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」(被災マンション法)を早急に見直すために審議してきたところ、10月26日に「中間取りまとめ」を取りまとめ、昨日からパブリックコメントに付されました。

この「中間とりまとめ」では、大規模な災害により区分所有建物が重大な被害を受けた場合、多数決により、建物を取り壊す旨の決議をすることができる「取壊し決議制度」や建物取り壊し後に建物の敷地を売却する旨の決議ができる「敷地売却決議制度」などが新設されることになりました。取壊し決議では、区分所有者及び議決権の各5分の4以上、敷地売却決議では、敷地共有者の持分の価格の5分の4以上の多数が必要とされています。

今回の見直しは、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物が対象で、管理が不十分などの理由からスラム化したマンションなどは対象外です。しかし、今後、この新制度が上手く機能する場合には、区分所有法の見直しにつながり、マンションの今とその先(その1)から(その3)で触れた新しいマンションの終わり方の一里塚となる可能性があります。細部の制度設計はこれからのようですが、登記手続との関係で使い勝手が悪くならないような工夫が期待されます。

全国自治体向け条例データベース

平成24年10月29日、自治体向けに立法支援のための条例データベースシステムが無償で公開されました。通称、eLenと呼ばれるシステム(の一部)で国立大学法人名古屋大学大学院法学研究科附属法情報研究センターにて開発されたものです。eLenは、単なる条例のデータベースにとどまらず、自治体の例規データについて横断的な検索や類似例規を容易に探すことができ、(将来的には)「政策設計の初期の試行錯誤や住民の要望収集・整理の段階から、要綱案作成や例規執筆の段階までをWeb上でシームレスに支援することを目指」す、一歩進んだシステムのようです。各地の自治体において、法曹有資格者を職員として登用する動きが広がりつつありますが、人手の足りない自治体にとっては、このeLenは大変強力な助っ人になる可能性を秘めています。

ただeLenの利用対象者が自治体内の例規業務に携わる方とされているため(他に大学等の研究機関や町村会等の関連協力団体も利用しているとのことです)、民間人が使用できない点は実に残念です。

マンション管理組合における理事会の裁量権

多くのマンション管理組合では、理事会が存在し、理事会が中心となってマンション管理が行われております。今回は、この身近な理事会に関する裁判例を紹介します。

管理組合法人の事案ですが、総会で大規模修繕工事の決議がなされたものの、ある事情から、その後、大規模修繕工事の一部を保留する決定を理事会が行い、実際に保留された工事の実施を見合わせたところ、これを不服とする区分所有者Aが理事らに対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償などを請求したというものです。当時の事情としては、規約に反して専有部分(店舗)前の共用部分に室外機や看板を設置していた区分所有者Aが、工事に協力する条件としてその規約違反状態の容認を求めるなどしたために、その店舗前の共用部分のタイル張替工事を断念せざるを得なかったようです。

 この事案において、裁判所は、「本件修繕工事については、総会が実施することを議決したが、理事会は、すべてにおいてその執行(実施)が義務付けられたというものではなく、執行(実施)する権限が授与されたものというべきであり、理事会が本件修繕工事を実施するにあたっては、理事会に一定の裁量が認められているというべきである。」と説示した上で、本件では裁量の逸脱は認められないなどと判断して、区分所有者Aの請求を棄却しました(東京地裁H24.3.28 判例時報2157号50頁)。

実務的には、本件のような場合に限らず、理事会にある程度の裁量があることを前提にマンション管理が行われておりますが(そもそも理事会等に一定の裁量を認める内容の総会決議となっているケースも多いと想像されます)、判例時報の解説によれば、「マンション管理組合の理事会に裁量があることを明示した初めての裁判例」であるとのことです。なお、この判決では、理事会が「管理組合の執行機関である」と明言していますが、この点は議論の余地があるでしょう。

借地借家法38条2項書面

定期建物賃貸借を行おうとするときは、「建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」とされていますが(借地借家法38条2項)、これまで、この交付される書面が賃貸借契約書と別個のものでなければならないかについて、見解が分かれていました。

この点について、最高裁第一小法廷は、平成24年9月13日、「法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。」と結論付けました。

この結論を導く過程で、借地借家法38条の規定の構造及び趣旨が示されていますが、その内容については議論の余地があるように思われます。

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