東山給水塔
マンションの今とその先(その4)
国土交通省が設置した「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の第4回検討会までの資料及び第2回検討会までの議事録に目を通しました。検討会での議論を追うなかで、改めて、「素人(平均的な区分所有者)でもマンションの管理ができるのか」という問いに結構真剣に向き合うことになりました。「できる」ということであれば、外部専門家の関与は例外的となり、「できない(又は困難)」ということであれば、原則外部専門家に関与させるべきだ、という流れになります。勿論、マンションの規模や特別な出来事・状況(大規模修繕工事や内部対立の有無)等を踏まえ、個別・具体的に検討することは必要で、一般論として「素人でもマンションの管理ができるのか」について答えよ、というのはやや乱暴な質問ではありますが、あれやこれやと考える中で、問題の所在が整理できますので、一度自分の頭で考えることをお勧めします。「いままで」と「これから」とでは事情が異なり、結論も異なるという意見もあるかもしれません。皆さんは、どのようなご意見でしょうか。
違法建築と請負契約
周到な準備のもと、建築基準法等の法令の規定に適合しない建物(違法建物)を建築しようとした悪質な違法建築事案において、その請負契約の有効性に言及した最高裁判例が登場しました。最高裁第二小法廷は、平成23年12月16日、違法建物の建築が著しく反社会性の強い行為である場合、その建築を目的とする請負契約が、公序良俗に反し、無効であると判断しました(判例時報2139号3頁)。なお、この判決では、違法建築部分を是正する内容の追加的工事(の契約)については、反社会性の強い行為とは言えないとして、その部分の請負代金を請求できる可能性を認めるなど、結論の妥当性を考慮しつつ、無効となる範囲と有効となる範囲の線引きを丁寧に行おうとしています。この種の紛争(要は、悪い者同士の争いです)を処理するに際しては、最も悪い当事者が得することがないようにするとの視点は重要です。
地域再生
帯紙の「消滅しそうな集落などいったいどこにあるのか?」という刺激的なフレーズに惹かれ、「限界集落の真実」という新書(ちくま新書 著者:山下祐介氏)を購入しました。賛同できない点が少なからずありますが、著者の熱い想いが伝わり、かえって切ない気持になりました。過疎地域に関連する記述が多い中で、「要するに、本当に地域再生が難しいのは大都市圏においてなのだ。」という指摘が印象に残りました。
武庫川女子大学甲子園会館(旧甲子園ホテル)
建築法体系勉強会とシリーズ日本新生
本日、放映されましたNHKスペシャル「シリーズ日本再生」では、「インフラ危機」がテーマでした。高度成長期に整備されたインフラが一斉に老朽化し、その維持・更新が大きな問題になっています。維持・更新するためには莫大な資金が必要ですので、その財源が確保できなければ、崩壊するのを待つか、これまでとは別の道を探すなどの工夫するほかありません。
このような状況は、住宅という分野でも同様です。国土交通省が設置しました「建築法体系勉強会」が、先日、検討結果をとりまとめましたが、その中で「建築法体系に係る現状と課題」として「不良化した建築ストックへの対応」について言及がありました。簡単に紹介しますと、「住宅の空き家率が13%に達する中、維持保全が適切に行われずに質が低下し、結果として、保安上危険、あるいは衛生上有害な状態に至るケースが発生しており、保安上危険である等の理由で行政庁から必要な措置を講じるよう勧告・命令等を受ける案件は年間10〜30件程度に上っている。建築ストックの成熟化が進行する中、今後はそのような不良化した建築ストックの解消を強力に推進する必要があると指摘された。」と述べられています。
NHKスペシャルの中でも議論されましたが、私達に与えられた時間はそうはない、ということです。
NOF神戸海岸ビル(旧海岸ビル)&商船三井ビルディング
マンションの今とその先(その3)
現在、国土交通省は、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」を開催し、マンションの管理に係る制度のあり方について検討を行っています(本日、第3回検討会が開催されているはずです)。第2回検討会までの資料をざっと読む限り、①区分所有者が管理に関心を持ち、主体的に対応することや②専門家を活用することで管理不全に陥らないようにしたいと考えている様子です。また、専門家を有効に活用するためには、利益相反や不正行為を防ぐためのモニタリング・システムが必要であることから、その仕組みをどう構築するかについても、株式会社や協同組合などの他の法制度を参考に併せて検討が行われています。新しい制度の導入を検討するに際しては、その制度が必要とする人材を現実に確保できるのかという視点は重要です。理念・理想だけを先行させるのではなく、現実を踏まえた議論がなされ、ベターな管理制度へと進化して欲しいものです。
マンションは、個人の居住用財産であるとともに、社会的資産であると位置付けられていますが(「マンションの管理の適正化に関する指針」等参照)、これはマンションがスラム化した際に周囲の住環境に与えるインパクトが戸建住宅の比ではないなどの認識に基づいています。人口減少社会では、空き家条例ならぬ、空きマンション条例が登場する事態も絵空事ではありません。そうならないように努力することは勿論大切なことですが、残念な状態に陥ったマンションに対しては、退場する(退場できる)道を用意する、という発想があってもよいでしょう。マンションは魅力ある住居形態です。ただ、魅力ある住宅であり続けるためには、その終わり方を整える必要があります。
埼玉りそな銀行川越支店(旧八十五銀行本店本館)
Photo No.15
撮影場所:埼玉りそな銀行川越支店(旧八十五銀行本店本館)
撮影日 :2012.3.6
撮影者 :Y.T.
蔵造り町屋が多く残る川越市川越伝統的建造物群保存地区内にあって、街並みにアクセントをつけている大正時代の近代洋風建築です。暖かい陽射しを浴び、いまもなお現役です。
マンション駐車場の外部使用に関する国税庁の回答
国土交通省は、マンション駐車場の外部使用(区分所有者以外の者の使用)の課税関係について相談が寄せられていることから、この問題を整理するために、国税庁に照会を行いました。照会の方法は、課税関係が次の3パターンに分かれるようなモデルケースを設定し、各モデルケースに対する法人税の課税関係を照会する形をとっており、照会内容及びその添付資料自体が頭の整理に役立ちます。
【課税関係パターン】
・駐車場の使用については、外部使用部分だけでなく、区分所有者の使用も含め、そのすべてが収益事業に該当する。
・駐車場の使用については、外部使用部分のみが収益事業に該当する。
・駐車場の使用については、区分所有者への使用のみならず、外部使用部分も含め、そのすべてが収益事業に該当しない。
この照会に対し、国税庁は平成24年2月13日に回答を行いましたが、国土交通省の見解については「貴見のとおりで差し支えありません」と述べています(ただ「ご照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答ですので、個々の納税者が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります」などの留保付です)。
詳細が知りたい方は、国税庁のWebサイトまで。