芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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都市で暮らすということ

東日本大震災をきっかけに、地盤の良し悪しなどというレベルの問題ではなく、どうしてこの街に住んでいるのか、どこの街に住むのか、ということについて思い巡らした方も多いのではないでしょうか。都市に住み、土地に縛られることなく、どこでも仕事や生活ができる方は、そのような我が身をありがたく思ったかもしれません。ただ、その一方で「その場所」と強く結び付けられた方の「その場所」に対する強烈な想いを羨ましく感じたこともあったはずです。

都市での生活者の多くは、通勤や子供の通学の利便性などを考慮し、また、ちょっとした偶然にも左右されつつ(偶々その街で気に入った不動産が売りに出されていた又は賃貸物件が募集されていたなどの事情)、経済的な制約(ローンや家賃の問題)と折り合いをつけながら、今の街を選択し、そこで暮らしているように思います。もっとも、仕事から退く時は必ず訪れ、子供も成長しますので、今暮らしている街と自分とを結び付けてきた利便性の持つ重みはいずれ変わります。従って、利便性以外の点で街との繋がりを感じることができないと「根無し草」であるかのような感覚に襲われることになりかねません。インターネット上での繋がりが地域との結びつきに代わることが可能かどうか分からない中、都市で心安らかに最後まで暮らしきるには相当の努力・覚悟が必要であると感じています。

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