芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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贅沢な悩み

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私は、仕事を通じて、様々な悩みを抱える方とお会いしてきましたが、時として一般の方からすれば、そのようなことで悩む必要はないのでは、と思うようなことで苦しまれる方がいらっしゃいます。経済的に豊かな方が多く、所謂「贅沢な悩み」ですが、当人にとっては大変な苦しみです。

「贅沢な悩みですね」というフレーズをよく耳にしますが、このフレーズが使われる場合、状況的にもっと大変な人達がいるのだから、悩む必要はないですよ又は悩むなんておかしいですよ、という気持が使う人にはあります。

しかし、「贅沢な悩み」は、贅沢でない「普通の悩み」と同じように深刻であり、それどころか「普通の悩み」より深刻である場合が多いというのが私の実感です。

悩みの原因の多くは、あるべき自分と現実の自分の(主観的な)ギャップであり、その深刻さは、そのギャップが大きいと(当人が)感じるか否かで決まるところがあるため、第三者からみて贅沢か否かということはあまり重要ではないからです。

そして「贅沢な悩み」は、既にそれなりのものを手に入れた方の心の問題であるだけに、より深刻な悩みに至ります。例としてあまり適切ではありませんが、世界で1番になることを熱望し、しかしどうしても1番に手の届かない世界で2番、3番の方の悩みが深刻であることは容易に想像できるところです。日本で100番の方が(日本で100番は大変立派ですが)、世界で2番、3番だから十分でしょう、という言葉を投げかけても、彼ら(彼女ら)の慰めにはならないでしょう。

人も羨む方も悩んでいます。自分だけが悩んで、苦しんでいる訳ではないのです。

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