芝大門法律事務所 所属弁護士 田村佳弘

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不動産取引とグレーゾーン解消制度

グレーゾーン解消制度とは、産業競争力強化法に基づくもので、現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、事業者が安心して新分野への進出等に取り組めるよう、具体的な事業計画に即して、事前に規制の適用の有無を確認できる制度です。経済産業省から、昨月、今月と不動産売買に関連する情報が公表されましたので、ご紹介します。

まず平成28年6月15日付「News Release」では、顧客に不動産業者の会社情報を提供し、顧客と不動産業者が希望する場合には両者の面談に同席し、売買契約が成立した場合に不動産業者から顧客情報提供の手数料を収受する行為が、宅地建物取引業法第二条第二号に規定する「宅地建物取引業」に該当するか否という照会につき、経済産業省と国土交通省による検討の結果、「該当しない」との回答がなされたことが紹介されています。 照会のあった事業は、物件の説明、契約成立に向けた取引条件の交渉・調整等の行為は、顧客と不動産業者間にて直接行い、事業者は一切関与しないものとされておりますが、照会のあり方に苦労(工夫)の跡が見て取れる事例でした。

続いて平成28年7月4日付「News Release」では、中古住宅の売買に際し、住宅の点検を行う事業者又は不動産仲介事業者が、予め金銭を徴収して住宅設備機器の保守及び故障時の修理を行う事業について、保険業法に規定する「保険業」に該当するか否かという照会につき、「該当する」との回答がなされたことが紹介されています。 関係省庁による検討の結果、照会の事業においては、①保守・修理契約の主体が住宅設備機器の瑕疵について民事上の責任を負う製造販売事業者ではないこと、 ②本事業のような仕組みは保険取引と異なるものと認知されているとは言えないこと等から、「保険業」に該当するとの結論に至ったようです。 この照会は、住宅の点検事業者が行っていますが、不動産売買に付随・関連するサービスの実施の可否については、不動産業者の関心が高く、この回答内容を最も残念に思っているのは、不動産業者であると推測しています。

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